排卵について
通常、女性の身体では脳と卵巣が緻密に連携し、約1ヶ月に1回、1個の成熟した卵子を排卵します。月経が始まると、脳の視床下部・下垂体から「卵胞刺激ホルモン(FSH)」が分泌されます。このホルモンが卵巣に届き、眠っていたいくつかの卵胞(卵子の入った袋)を育て始めます。
育ち始めた複数の卵胞の中から、最も環境が良く元気な1個だけが「主席卵胞」として選ばれ、急成長します(他の卵胞は途中で退縮します)。卵胞が育つ過程で「エストロゲン(卵胞ホルモン)」が分泌され、これが子宮に届いて子宮内膜(赤ちゃんのベッド)を厚くフカフカにしていきます。
主席卵胞が約20mmの大きさに成熟し、エストロゲンの分泌がピークに達すると、脳は「卵が育った」と判断します。今度は脳から「黄体化ホルモン(LH)」が一気に大量分泌されます(これをLHサージと呼びます)。この強力なスイッチにより、卵胞が破れて中の卵子が飛び出します。これが「排卵」です。
このステップでは、以下のような原因で不妊となるケースがあります。
-
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
脳からのホルモン指令(LHとFSH)のバランスが崩れ、卵巣内で男性ホルモンが過剰になります。これにより、10mm前後の未成熟な卵胞が卵巣内にたくさん並んで成長がストップしてしまい(多嚢胞化)、卵巣の膜も硬くなるため、排卵が著しく困難になります。
-
高プロラクチン血症
本来は産後に母乳を出すためのホルモンである「プロラクチン(PRL)」が、妊娠していない卵胞期にも高値になってしまう疾患です。
-
卵巣機能低下 / 早発卵巣不全(POI)
実年齢よりも早く卵巣の機能が衰え、卵巣の中にある卵子のストック(原始卵胞)が急激に減少してしまう状態です。
-
視床下部性・下垂体性無排卵(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)
卵巣自体には問題がないものの、司令塔である「脳(視床下部や下垂体)」が疲弊し、卵胞を育てるホルモン(FSH、LH)を出さなくなってしまう状態です。
-
黄体化未破裂卵胞(LUF)
卵胞期の後期(排卵期)に起こる特殊なトラブルです。卵胞自体は20mm前後まで綺麗に成熟し、脳からも排卵のスイッチ(LHサージ)が正しく入るにもかかわらず、卵胞の壁が破れず、中の卵子が飛び出せないまま黄体化(排卵が完了したような状態に変化)してしまいます。基礎体温は綺麗な二相性(高温期が来る)になるため見落とされやすく、超音波検査で確認して初めて分かります。